言波(ことのは)語りブログ

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【小説】殺害予告者の閉鎖病室1212第10部

殺害予告者の閉鎖病室1212第10部

第39幕夏を感じた
広日記『16時母面会に来る。7月31日火曜日の成田先生との四者面談で、誰かの付き添いありなら、病棟の外に出られて病院内を自由に、行動出来ることが可能になったので、母からの提案で病院の1階に降りることになった。久しぶりの地上だ。そして母から「病院の外に出て、どれだけ外が暑いか体験してごらん」と言われた。私は当然(病院からの外出許可が出ていないし、逃走を図ったとも思われかねない)と思い病院の外に出るのを渋ったが、しかし母の強引なススメで私は、1階の出口から出た。冷えた病院の中に居たせいか、母や波姉が言っていた外は暑いと言うより暖かく感じた。しかし16時30分からお風呂の予約を取っていた為
十数分しか外出が出来なかった。だがしかしその僅かな時間だけでも、私はやっと夏を感じられた。また夏を感じられるかな』
広日記『16時28分病棟に戻り、母は私が外に出られて「嬉しそうだったね」と言った。そして隔離室でお風呂の支度をして、浴場に向かった。』
広日記『16時35分入浴』
広日記『17時20分隔離室に戻る。母は私が入浴中、別の階で過ごし6階にある美容室のパンフレットを持って帰って、先に隔離室に戻っていた。』
海里「明日病院の中に美容院あるから散髪しに行っておいで。6階だって。8月3日に保健師さんと会うしサッパリした方が良いよ。それと明日はママは家で休養を取りたいしナースさんの付き添いでさ。どう?」
広(明日は海里は面会に来ない。美容室に行って精神科病棟の外に出るのも悪く無いな。良い気晴らしになりそうだ)「良いけど予約とか必要無かったっけ?去年利用した時、確かそうだったはず」
海里「じゃあ確かめにナースステーションに行ってナースさんに聞こうか」
広「うん」
海里「すいません。明日の美容室の利用は可能ですか?」
ナース「もうこの時間だと明日に、ならないと予約が取れなかったはずです。ですよね?」
ナース「そうですね。明日ですね。明日当日に予約が空いているか確認して、空いていたら空いている時間に予約を入れて、美容室の利用が可能になります」
海里「なるほど。ありがとうございます。じゃあ広、明日予約入れるんだよ」
広「分かった」隔離室に戻る2人。
海里「じゃあ今日もフォロワー数を確認してあげようか」
広「もう減って行っているだけだからしなくて良いよ」
そうすると海里は嬉しそうに「ついにそういう考えに辿り着いたか!」と言った。
広はSNSに思い出などを詰め込んで来た。それが崩れ去ろうとしている現状に、生きる気力を含め全てに希望が見出せず、諦めの意思を込めて「退院したら死のうと思っている」と広は発言し海里に思いを告げた。
すると必死そうな思いで海里は「広は今までたくさんの人に支えられて来た。みんなに守られて来た命をまだ若いのに諦めないで。広にはまだ生きる道がある。人生がある。刑務所の中じゃなかったから本当にマシなの。だからやり直したくてもやり直せない訳じゃあいの。広はまだやり直せるのよ」そう海里は言ったが広はまだ、やり直せるとは思っていなかった。SNSのアカウントの終わりは人生の終わりだと感じていた。
広日記『19時42分あの会話のあとは病棟内を2人で歩き周ったり、多目的室や隔離室で、たわいもない話しをした。そして母帰宅。母と握手してハグして手を振り見送り別れた。』
広日記『19時55分面会終了まで5分前のアナウンス』
広日記『20時35分寝る前の薬を配るアナウンス』
広日記『21時15分消灯の為明かり消される』こうして8月1日水曜日は終わった。

 

第40幕散髪日和
広日記『5時20分起床』
広日記『6時57分朝食が届いたアナウンス。パン、ゆで卵、マカロニサラダ、バナナ、牛乳、お茶。』
広日記『7時17分朝食完食』
広日記『朝食後の薬を配るアナウンス』
広日記『9時37分ナースさんと髪の毛を切りに行く』
広「ナースさん今日髪の毛を切りたいから、美容室に予約を取ってもらえませんか?」
ナース「良いですよ。今連絡してみます。…今からでも大丈夫そうです。今日の担当のナースに付き添いしてもらえるように、今声を掛けるので待っていて下さい」
ナース「お待たせ広さん行きましょうか」
美容室着
理容師「切り終わったらナースさんを呼べば良いんですよね?」
ナース「はいそうです。よろしくお願します」
理容師「分かりました。それではいらっしゃいませ。どんな感じに切りますか?」
広「今の感じを残しつつ短くするのとすいてもらえば良いです」
理容師「分かりました」
数分後
理容師「こんな感じでどうでしょうか」
広「良いと思います」
理容師「ではお代頂戴します。今回はカットのみでしたので2500円です」
広「はい。どうぞ」
理容師「ではナースさんを呼ぶので座って待っていて下さい」
広「はい」
数分後
ナース「お待たせ広さん。戻りましょうか」
広「うん」
ナース「少しサッパリしたね」
広「そう?」
広日記『10時17分精神科病棟に戻り、隔離室に戻る』
広日記『14時30分レクリエーションを始めるアナウンス。私はナースさんの言う通り参加しに行くことにした。』
ナースコール越しナース「これよりレクリエーションを開始します。準備が済まれ、参加される方は多目的室にお集り下さい」
広日記『15時30分レクリエーションが終了して隔離室に戻る。卓球を患者みんなとして楽しい思いが出来たので良かった。』
広日記『21時10分消灯の為明かり消される。』
広日記『寝る前に7月18日に出され、母や成田先生に追加され、7月24日の三者面談の時から加筆した、母からの宿題は終わらせた。これで明日保健師さんに、私のことを少しは理解してもらえるだろう。結果的に追加の得意なこと苦手なことだけを、書いたが宿題の内容は、まとめるとこうなった。
保健師さんに聞いてみたいこと・どんな仕事でどこまでサポートしてくれるの?、保健所って具体的にどんな所?
2興味や好きなこと・嫌いなこと・創作が好き、音楽を聴くのが好き、お菓子甘い物が好き、太った人と食事が苦手
3これからやってみたいこと・してみたいこと・創作活動を本格化、異性の装い
4得意なこと・苦手なこと・得意なこと、想像すること。しかし妄想し過ぎで自分を苦しめる、苦手なこと、寝ること、起きること、食事すること。だ。』
広は日記にも宿題のメモの内容を書き上げたので寝る事にした。こうして散髪の日は終わった。

 

第41幕保健師との面談そして通信機器解禁
8月3日金曜日・
広日記『13時15分成田先生が保健師さんと話ししているのか、診察室は診察中という風に扉にマグネットで表示されていた。その為私は靴ずれの傷も治っていたので、無理もなく病棟内を歩き周っていた。しばらくすると私が角を曲がった時に、ちょうど成田先生が診察室から出て来て、私を呼ぶ為か私の病室、1212号室の隔離室へ向かう姿が見えたので、私は急いで後を追って成田先生を呼び止めた。』
そうして診察室に入った2人。診察室の中には保健師と母海里が居た。
海里「ほら挨拶しなさい」
広「あっ、はじめまして菊川広です」
保健師「はじめまして~!武井と申します。よろしくね!じゃあ、広さんのことを教えて欲しいな」
海里「宿題のメモ見せな」
広「メモを持って来る」
保健師武井「メモ?」
海里「武井さんに本人のことが分かって伝えられるように宿題にしてメモを書かせたんです」
保健師武井「なるほど」
広は隔離室に戻り、昨日ようやく完成させた7月18日に海里から出された宿題のメモを診察室に持って行き、保健師武井に手渡して見せた。そして保健師武井はメモを見ながら会話を始めた。
保健師武井「保健師は相談に乗ったりするし、健康について、分かりやすく言えばナースさんや学校の保健室の先生みたいなのが保健師です。保健所はそういう健康に関係のあることの時とかに相談に来る場所です。創作好きなんだね。創作ってどんなもの?」
広「色々と。例えば昔はマンガを描いて作っていたから想像は得意」
保健師武井「太った人が苦手なんだ。私ぐらいなんかは大丈夫?」
広「全然大丈夫。標準体型だと思いますよ」
保健師武井「なら良かった。お菓子が好き…音楽が好き…食事は苦手なの?お菓子は好きなのに食事はどうして苦手なの?」
広「それは…」
海里「痩せたい思いでなかなか食べようとしないんです」
保健師武井「そうかだから太った人が苦手なのかな。今の活動を本格化するってどういうこと?」
広「創作活動のこと」
保健師武井「想像し過ぎて自分を苦しめちゃうんだね」
広「妄想が膨らみ過ぎて暴れる原因にもなっていると思う」
保健師武井「寝るのも起きるのも苦手なんだね。これは今後のことも考えると、規則正しく生活出来た方が良いよ。まだこれから先のこととして頭の片隅には入れておいて。学校行っていた時はどんな感じだったかな?」
海里「午後から遅れて行ったり、そのまま今日は授業はお終いだから明日おいでって言われることもありました」
広「でも午前中に時間通りに間に合っていた日もあるよ」
保健師武井「電車でどこまで遠出したことある?この質問はどれくらい電車に乗れるかの能力を知りたい」
広「初めて行く場所は少し慣れないと難しい」
保健師武井「なるほど。でもみんなそんなものでしょう。他に知っておいて欲しいことってある?」
海里「小さい頃から手術をしていて、逆に脆くなっている箇所があるんです」
保健師武井「大体分かりました。広さんに向いていそうな場所を提示出来るのは一週間後以上になると思います」
成田「早く退院出来なくてショックかも知れないけど、退院に向けて前進しているので安心して下さい。毎週武井さんに来てもらうのも、なんですから何か方法はありますか?」
保健師武井「お母さんに施設の資料を郵送して、面会時に広さんとお母さんのお2人で判断してもらう手はあります。お母さんはどのくらいの頻度で面会に来られていますか?」
海里「ほぼ毎日は来ています」
保健師武井「なら出来なくはないですね。それではこのくらいで失礼します」
海里「今日はありがとうございます」
広「ありがとうございます」
保健師武井は診察室をあとにした。
海里「少し休憩する為に16時まで別の階に広を連れて行っても良いですか?」
成田「良いですよ。それでどこの階に行かれるんですか?」
海里「6階辺りに」
成田「分かりました。ナースの方に伝えてから行って下さいね。それといつ頃戻って来ますか?今14時前ですけど」
海里「16時には戻って来ます」
成田「分かりました。では16時に続きの話しをしましょう」
烏山大学病院の6階には広が行った美容室の他に1階と同じく売店がある。そしてさらに小さな庭園もある。大きな屋上庭園は7階にある。広と海里は6階に着くと6階の小さな庭園に出た。そして広はまた夏を感じられたと思い、嬉しくなった。そして少しして室内に入り、イスと机があるのでのんびりした。この時広は保健師武井との会話の始まりから終わりまでを日記に書いた。そうして売店でも飲み物を買っていたので飲み切って16時手前に精神科病棟に戻る為エレベーターに乗って病棟に戻った。そして16時に診察室で三者面談が始まった。
成田「じゃあ早速だけど通信機器について話して行こうか。使用する時間は13時から消灯までにしようと思っています。いかかですか?」
広「うーん。出来れば午前中も使わせて欲しい。そこまでどうせバッテリーの持ち良くないから、消灯頃までにはナースさんに充電を頼めると思う」
成田「それはまだ長いかな。こっちも妥協して言っている部分はあるんだよ」
広「それでもなー。日中は小型音楽再生機みたいに使えたら良いのに」
成田「お母さんはどうですか?」
海里「レクリエーションとかへの参加もして欲しいので、極力短く時間設定しても良いかと思います」
成田「なるほど。じゃあ13時から18時にして、病棟の活動を優先する方針にしましょう」
広「えー」(余計なこと言いやがって)
海里「2日にあったレクリエーションにはちゃんと参加していたみたいですけどね」
成田「その調子だよ。それでSNSの使用方法について、プライバシーもある為他の患者さんの投稿や病院についての投稿はダメだよ。それとこれは当然だけど、人や自分を傷つけたり、脅すような投稿はしないでね。あと投稿はまずは、家族の居る時に内容確認してもらってからにしようか」
広(最初だけね。明日からはどうせ、自分の物だし確認されなくても投稿するし。て言うかしたい)
成田「それとフォロワーが減った時はどうしようか」
広(これから発信して行く日々になるんだから減るより普通は増えるでしょ。でも万が一を考えると…)
広「誰がいなくなったか確認する」
成田「それだけで落ち着くの?」
広「今までは数字だけだったけど、これからは誰がいなくなったとかを確認出来るし、投稿して発信出来るから不安材料は減る」
成田「それだけじゃ少ないから他に無い?」
広「じゃあナースさんにフォロワーが減ってショックだったことを伝える。あとはその時の気持ちを紙に書くとか?」
成田「そうだね。あとは、とんぷく薬を使うのも手だね」
海里「気分転換に歩くとかはどうでしょう」
成田「それもありですね。ひたすら歩くと。まず、最初の通信機器の使用ルールはこんな感じでしょう。紙に使用ルールのメモを書いたので壁なりに貼っておいて下さい。拘束の時みたいに次第に自由になるから、今は腑に落ちないところはあるとおもうけど辛抱してね。じゃあ今回はこの辺でおしまい。お疲れ様でした」
海里「ありがとうございました」
広「ありがとうございます」
広日記『16時約束通り病棟に戻り、そのまま成田先生と三者面談が始まった。通信機器の使用についての話し合いだった。腑に落ちないところがあったが成田先生も妥協した部分はあったようだ。それにしても日中は全ての時間を使えるようにしてくれれば良かった。今後は通信機器の使用時間の拡大が目標だ。』
そうして20分程の三者面談が終わり、早速通信機器を使えるようになり、海里の確認の元、SNSに広の作っていた全アカウントに少しずつ今日から再開しますなどと言う投稿をした。どのアカウントもフォロワー数は減っており、しかし一番はメインアカウントと創作アカウントのフォロワー数が気になった。入院直後メインアカウントは84フォロワーまで減っていたのを確認出来ていたが、さらに再開してから20近くのフォロワーが減っていた。創作アカウントは10フォロワー程減っていた。広はショックを受けたが、またフォロワーを増やして行けば良いと考えた。それは海里からも言われた事だった。その為フォロワーを増やす事も目標になり、生きる希望となった。しかし広が驚いたのは通信機器の通知の量だった。ほぼ一ヶ月以上未使用だった為にSNSの連携しているメールアドレスにメールがたくさん来ていた。この使用許可が出た8月3日金曜日には全ての通知を処理出来なかった。
広日記『17時38分夕食が届いたアナウンス。白米、炒り鶏、ブロッコリー炒め、めかぶとろろ、お茶。』
広日記『18時夕食完食ちょうどナースさんが通信機器を回収に来た』
広日記『18時7分夕食後の薬を配るアナウンス』
海里「通信機器を使えるようになって良かったね。明日ゆっくり使いなね」
広「でも海里が余計なこと言わなかったら、消灯まで通信機器が使えた」
海里「だって病院での生活をちゃんとして欲しかった」
そのあとはなんだかんだたわいもない話しをして過ごした2人だった。
海里「じゃあそろそろ帰るね。見送って」
広「うん良いよ」
広日記『19時27分母帰宅ハグして握手して手を振り見送り別れた。』
広日記『19時55分面会終了まで5分前のアナウンス』
広日記『20時30分寝る前の薬を配るアナウンス』
広日記『21時12分消灯の為明かり消される』こうして保健師との面談と通信機器解禁の日は終わった。

 

第42幕花火
8月4日土曜日・
広日記『私は早く通信機器を使いたくて、昼食後の検温を済ましたあとに、すぐ入浴が出来るようにお風呂の予約を取った。そして12時45分入浴』
広日記『13時10分隔離室に戻る。そしてナースステーションに行きナースさんから通信機器を受け取った。』
広は作ってあるSNSの全アカウントのフォローとフォロワーを確認して、減っていない事に安堵した。そして早速家族の確認の無いところで、広はSNSにいくつか投稿をして満足をした。当然病院の事、入院している事は、広は退院まで伏せて投稿していた。
広日記『15時30分波姉面会に来る』
波音「今日も暑いよ。あといつもの緑茶3本ね。それとお菓子。もう入院も8月に入ったね。早く退院出来ると良いんだけど。それと聞いたよ。隔離の時間が無くなって解除されたんだってね。あとは通信機器も使えるようになったし、誰かの付き添いがあれば病棟の外に出て、病院の中を自由に動けるんだってね。保健師さんとも話ししたみたいだし、この一週間は色々あって良かったね!」
広「うん。良かった。でも通信機器の使用ルールにSNSに投稿する時は、家族の内容確認が必要なんだよ。それと病院のことは書いて投稿していないけど、病院のことも投稿するのはダメなんだ。それでもさっき、誰も居ない時に当たり障りのないけど、SNSに投稿しちゃった。だから念の為に確認して欲しい」
広はSNSに投稿した内容の画面を波音に見せた。
波音「うん。悪くないと思うよ。日常を切り取った感じの投稿で全然平気だと思う」
広「そう?なら良かった」
波音「少し休憩したいから休憩したら、病棟の外に出て病院の中歩こうか。7階だったっけな屋上庭園があるから、そこで広にもこの暑さを感じて欲しい」
広「この前海里にも似たようなこと言われて外に出されたよ」
波音「ハハッそうなんだ」
広日記『16時30分通信機器を持って、病棟を出て7階の屋上庭園に行き、また私は夏を感じた。』

広日記『16時50分病棟に戻り隔離室に戻った。』
波音「暑かったね。すぐ戻って正解だったよ」
広「もう少し居ても良かったけど夕食がそろそろ来ると思うからね」
広日記『17時30分夕食が届いたアナウンス。白米、鶏のねぎ塩焼き、若竹煮、イモ、お茶。』
広日記『17時50分夕食完食』
波音「通信機器をいじってどうしたの?」
広「今日最後にSNSに投稿したい」
波音「もう今日は良いよ。また明日にしな」
広「でもしたい」
波音「どうせパッと投稿内容思いつかないでしょうに」
広「うん。まあ確かに」
波音「先にもうナースステーションに預けて来なよ」
広「18時までまだ残り時間がある。それにナースさんが時間になったら回収に来るもん」
波音「自らの行動が使用出来る時間の制限を伸ばす一歩だよ。それになんだかんだ18時になったよ。預けに行っておいで。我が子ように思っているだろうけど、いつまでも親が子に、くっついていたら子から嫌われるよ。離れちゃいけない時があるんだよ。ほらだから預けに行きな」
広「分かった。我が子を預けに行って来るわ」
波音「広が通信機器を預け終わったらお姉は帰るね」
広「分かった」
広日記『18時13分夕食後の薬を配るアナウンス』
広日記『18時20分ナースステーションに通信機器を預けた。ナースさんが回収に来なかったので、波姉に言われて渋々と預けた。そうするとナースさんは時間が過ぎていることに気づく。それで波姉もナースさんも「自らの行動が使用出来る時間の制限を伸ばす一歩だよ」と言った。』
広「我が子を預けた」
波音「よくやった」
広「そう言えば今日は花火大会があって花火打ち上る日だよ。見なくて良いの?」
波音「実は友達と飲みに行くんだ。だから花火は見ておくんだよ。じゃあね」
広日記『18時25分波姉帰宅手を振り見送り別れた。ハグなどが無く少し寂しかったが今日は花火が見られる。楽しみだ。』
19時過ぎ・19時には花火が打ち上ると聞いていた広だが、なかなか花火が打ち上らずに、広や他の患者はまだかまだかと、待ち望んでいた。すると少し遅れて花火は病棟にある大きな窓から打ち上るのが見え、患者達は歓声を上げた。他の患者と花火を見るという行為を介して広は、他の患者と色んな会話が出来、コミュニケーションが取れた。広はお年寄りの患者との会話で、このような会話を交わした。
広「去年もこの時期に入院して花火を見たんです」
お年寄りの患者「そうですか。また同じような経験をされるとは」
広「ですよね。また同じ経験をするとは思いもしませんでした。しかも平成最後に」
お年寄りの患者「そうですね。最後ね。まだお若いですし次が無いと良いですね」
広「ですね」
お年寄りの患者「去年の花火と比べて今年の花火の見栄えはどうですか?」
広「覚えて無いですよ」
お年寄りの患者「そうですね。嫌な記憶は忘れた方が良いです。覚えてなくて良い」
その言葉は広にもお年寄りの患者本人にも、お年寄りの患者本人が言っているようだった。
その会話を広は花火を、見終わってから日記に書き記した。
広日記『そうしてお年寄りの患者のとの会話もした。しばらくすると次第に花火を見る患者も減って行き、しばらくしてそのお年寄りの患者も自分の病室に戻って行った。最後は私一人になった。去年は隔離にまだ時間制限があった為、花火の途中で隔離室に戻された。だからせめて今年は最後まで花火を見たかった。花火を打ち上げる由来は魂を鎮める意味が込められているらしい。7月15日に見たあの少女の夢の「自分の魂を殺してしまった」と言うのは、死んでしまった私の魂が今日の花火で鎮まったのだろうか。最後に打ち上った大きな打ち上げ花火はきっと、自ら殺した一人の心と、私の魂を安らかに眠らせたのだろう。私はそう思いたい。』
広日記『20時になり花火が打ち上る気配もなくなり隔離室に戻る。そして日記を書いた。』
広日記『20時30分寝る前の薬を配るアナウンス』
広日記『21時15分消灯の為明かり消される』こうして花火鑑賞の日は終わった。